酒蔵訪問記

「春心」「小松人」西出酒造（石川県小松市）

石川県小松市にある家族経営の小さな酒蔵「西出酒造」
五代目にあたる西出裕恒氏は「酒造りの神様」農口尚彦氏のもとで五年修行され、
昔ながらの生酛作り、酵母無添加、地元産のお米、
地元産の木材で木桶や甑も作成し、究極の地酒を目指しています。

この軸は守りながらも、次々と新しい事にもチャレンジされる方で、
蔵で培養した蔵付酵母使用の速醸アナザーシリーズや
ビール酵母を使用したお酒等々。

井戸水は良質な軟水。
搾りは手間や体力を使う佐瀬式の木槽搾り。
造りは水酛から始め、神棚に御神酒として供えられます。

目を掛けつつも自然に任せた造りを大切にされる方に感じましたので
定番の生酛THEハルゴコロでもその年ごとの味があると思います。
地元と伝統を大事にしつつ遠く先を見ておられる西出さんが醸すお酒。
ぜひ味わってみてください。

「舞美人」美川酒造場（福井県福井市）

福井駅から車で10分ほどの所にある美川酒造場。
一度呑んだら忘れられない「舞美人」を醸すのは、六代目蔵元、美川欽哉さん。
明るく朗らかでお話好きな方というのがお会いしてみての第一印象。
醸すお酒は、今や貴重な和釜で蒸して木槽でゆっくりと搾られます。
仕込み水は横を流れる足羽川の伏流水。
年中15度を保った軟水です。

山廃造りに興味を持ったきっかけは、
滋賀の不老泉の燗冷ましの美味しさに感動したことによるらしく、
最初の年は協会酵母を使用して造ってみると美味しくできたものの満足いかず
翌年から特色を出す意味も込めて蔵付酵母で山廃造りを始めます。
すると異常なくらい酸が際立ち、研究機関で調べてもらうと
乳酸系由来の蔵付酵母によるもので、腐造ではないことがわかりました。
美川酒造場の蔵付酵母は他の酵母より生成する乳酸が多いそうです。

また麹室が新しく増設され、現在、新室・旧室と麹室が二つあるという面白い環境。
しかも新室はスマホでリモート温度管理ができます！

舞美人は、まずどうしても酸が語られますが、
しっかりとした味、旨味甘みがあるからこそ生きてくる酸。
一度呑むとまた呑みたくなる。どんどんハマっていきます。